TOP > 研究紹介生命モデリングコア

生命モデリングコア
計測・計算・デザインの 3 つの柱の下に連携を進め、細胞システムの理解・予測・制御の実現を目指す。
このために必要な分子設計を、計算機シミュレーションを用いて合理的に行うための手法開発とその応用研究を行う。

生命モデリングコア (泰地 真弘人)
計算分子設計研究グループ(泰地 真弘人)
分子機能シミュレーション研究チーム(杉田 有治)
生化学シミュレーション研究チーム(高橋 恒一)
多階層生命動態研究チーム(古澤 力)
フィジカルバイオロジー研究チーム(柴田 達夫)
創薬先端計算科学基盤ユニット(泰地 真弘人)
発生幾何研究ユニット(森下 喜弘)

 
シミュレーション・統計解析による生命現象の解析
最先端計測により得られた膨大な生命動態の定量的データを高性能計算機を用いて数理モデル化し、複雑な生命システムを定量的に取り扱う手法を確立する。実験と比較可能なシミュレーションを実現し、分子から細胞・組織までを統合した理解・予測・設計を可能にする。
生命は多階層にわたる複雑性を持ち、動的な非平衡・非線形系である。こうした系は理論的な解析が困難であり、本来計算機シミュレーションとの相性がよい。しかし、これまでの生命科学においては、 計算機シミュレーションの適用は限定的であった。その最大の理由は、生命の複雑性のために、 信頼に足る計算モデルの作成のためのデータが不十分であったためである。 この点に ついては前述のような精密計測により今後解決していくであろう。
さらに計算量の不足も大きな理由である。例えば、タンパク質の分子シミュレーションでは、基本となる時間刻みは約1フェムト秒であり、生物学的に興味のある大規模な構造変化はミリ秒スケールで起こる。従って、その間を埋めるには1 兆ステップが必要となり、膨大な計算量が必要と なる。
また分子ネットワークのシミュレーションを考えると、細胞内では多様な分子が大きな濃度差で存在するために、濃度の概念では分子単位の揺らぎを十分に捉えることができない。このために1分子単位で取り扱う計算手法が必要である。さらに組織内の単一細胞の挙動に関しても同様に、多種の細胞間の多様な相互作用を考慮した計算手法が必要である。

次世代スーパーコンピュータや専用計算機に代表される近年の計算能力の向上に加え、マルチスケール計算手法などのアルゴリズム上の取り組みにより、生命科学の諸問題を計算機シミュレーションで 解決できるレベルに到達しつつある。ここでは特に「ミリ秒スケール分子シミュレーション」「1分子粒度細胞計算」「1細胞粒度組織計算」の3つのブレークスルーに取り組む。
 
 
ミリ秒分子シミュレーション
これまでタンパク質の動的な性質の理解は、計算量の限界から結晶構造の近傍のみのスナップショット的な描像に基づいていた。生体反応場で機能する際に必要な構造変化を時間軸情報も含めてまるごと捉えるためには、ミリ秒スケールの時間までその動力学を追跡する必要がある。次世代スーパーコンピュータや専用計算機の計算能力を最大限利用し、マルチスケールシミュレーション手法などを取り入れることにより、分子動力学計算の時間スケールを数桁上げミリ秒スケールのシミュレーションを実現する。これによりin vivoでのタンパク質の構造計算、1分子計測情報との比較・検証が可能になり生体分子の反応時間に合わせた分子動態が明らかになると期待される。さらに、量子効果を取り入れた酵素反応の解析や、タンパク質の多様な状態を基にした薬剤設計など大規模シミュレーションに基づく創薬基盤技術の開発を行う。
ミリ秒スケール分子動力学計算によるシミュレーションの質的変化
 
1 分子粒度細胞計算
細胞内分子動態イメージングやミリ秒分子シミュレーションなどの新技術群は細胞内分子間相互作用の同定に新たな地平を開く。
この新たな地平の元に、分子1つ1つの運動のレベルから細胞内反応ネットワークを再構築する1分子粒度細胞シミュレーションを展開する。細胞内空間は、タンパクなどの巨大分子が高密度でひしめく巨大分子混雑の状態にあり、これがどのように細胞内反応ネットワークに影響するか計算することも重要な課題である。

最終的に、細胞システムの挙動を計算に基いて予測・制御・設計・解析する技術を確立する。
格子気体モデルに基づく1分子粒度細胞計算
 
 
1 細胞粒度組織計算
1分子粒度細胞計算をさらに高性能化、粗視化することで、組織や器官の発生や機能、疾患などの細胞の集合レベルでの現象と、細胞の分化、癌化、形態変化、プログラム死などの1 細胞レベルの状態変化とを関連付ける1 細胞粒度組織計算への道が開ける。
細胞間の相互作用の生化学的・力学的動態計測に基づき構築された数理モデルを用い、細胞・組織動態の予測・制御・設計へ向けたシミュレーション技術を開発する。

 
このページの先頭へ↑