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技術の新機軸を見出すためには数が重要

「技術のイノベーションを本当に考えるのなら一つに絞らずたくさん生み出すことが重要だ」という考えの元、研究を行ってきた渡邉さん。 「必要性がイノベーションを生むと多くの人が考えているようですが、必要性を満たすための技術はそもそも大した技術じゃないと僕は思います。イノベーションはわからないところから出てくるものではないでしょうか。僕は、とにかくたくさん技術を用意しておくので後はどれか一つでも使ってくれればいいというスタンス。そうやって誰かが使うことでさらにユーザーが増え、初めてイノベーションという形になっていくのです」

当時、乳がんの研究を行っていた先生と一緒にいた彼は、その先生からの課題を解決しうる方法を何個も作っていきました。しかし、何個も生み出すには視点も知識も必要。そこで、学生からもアイデアを集め、それをどう実現するかを一緒に考える方法を取りました。その時、体の中のドラックデリバリーを一分子レベルで見るということを最初にやり遂げました。

さらに、研究者の知的財産やノウハウを守り、それをビジネスに生かすことを考え、研究者の要望を聞いて、カスタムメイドで装置を作る会社、株式会社ジーオングストロームを起こしました。社員は全員学生。渡邉さんは昼は大学の助手、夜や土日は会社の社長として忙しい日々を過ごしました。

「会社のコンセプトを達成するには僕は最先端の研究をし続けなければならない。つまり顕微鏡技術について世界で一番知っていないといけないし、生物のことに関しても知っていないといけないので研究者であるべき」

結果、ゼロ円で起業したこの会社は3年間で5千万円という売り上げ目標を見事達成しました。

そうした活動を重ねる中で「もっと自由に研究をしたい」と考えた渡邉さんは、2007年にアメリカのマサチューセッツ医科大学へと研究の場を移します。日本と全く違う環境で、思う存分研究を行っていましたが、1年経たずに日本からの熱い声に応じて帰国。アメリカでの研究生活に心残りはあったものの、すぐにいつもの「人生は二択。やるかやらないかで、選んだ道両方ともそれなりに人生。だから、決まってしまったことを嘆くのではなく、選んだからこそできることをやろう」という生き方方針にのっとり気持ちをシフトチェンジ。大阪大学・免疫学フロンティア研究センターにて研究に取り組み、その後2011年に「自由なことをやるという理念が以前から好きだった」というQBiCへ入所されました。

現在、渡邉さんのチームに所属する研究員は10名。物理学や分光学出身の研究員で構成されており、一人3つの研究を平行して行うのが当たり前となっています。その結果、彼のラボは常にアウトプットが行われており、着実に実績を積んでいます。

「僕は求められたことに対してどう解決するかということだけ考えるようにしていて、自分の趣味嗜好は入れません。一応研究者なので自分の中に解きたいことや興味あることがあるのですが、それは解けないからおもしろい。今は、QBiCが求めるアウトプットの形をどう組み立てて実現していくかを頭において研究を行っています」