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大きくガッツポーズする日=大発見する日を夢見て

2010年、清水さんは上田卓也教授から独立してQBiCに入所。上田泰己さんが束ねるコアグループの一部としてユニットリーダーに着任します。グループ内で遺伝子工学が得意な方と一緒に技術開発をしたり、大阪大学の方と共同研究したりと、常にいろいろな方と一緒に連携を取りながら研究している一方、ご自分の研究も独立性を持って取り組まれています。

「今は、生化学の世界を変えたいという思いを実現するために、どういう技術が必要か考えて揃えていくような日々です。」 研究者としてのやりがいを感じる時は、知らない人たちが自分の作ったものを使っているのを見た時。最近、論文検索をしていて、全く知らない人がPUREシステムを使っていて驚いたそうです。過去にも、この論文は自分に近いなと思いよく読んでみるとPUREシステムを使っていたということもあったのだとか。

「予想外の研究に利用されているのを見た時は悔しさより喜びが強いです。世間一般ではサイエンスは競争という認識が強いと思いますが、私の中では、全ての研究者が協力しあって達成されていくものという意識が強いです。論文などを通して情報をしっかりオープンにしたり、私のPUREシステムのように、販売という形を通じて他の研究者が気軽に使える技術にするからこそ、次の一手がまた生み出される。だから、誰かが何かを成し遂げた中で私の技術が使われていたらすごく貢献したと思えるし、そこに自分の名前がなくても別にいいと思っています。私が研究する上で一番のモチベーションになるものは、自分のアイディアを『もの』という形で具現化できたら楽しいということ。だから皆にどんどん使ってもらいたいです」

そんな清水さんがかっこいいと思う人は、「リスクを取って、勝ちきる人」だと言います。

「ここぞという時に勝ちきる人はかっこいいな、うらやましいなと思います。私はリスクを負うという感覚が好きで、趣味の一つが麻雀なんですが、運や実力など複雑な要素がからんで勝敗が目の前で決まっていくゲームでは、どんな場面でも冷静に対処できるというのが大事になってくる。例えば、阿佐田哲也さんの『Aクラス麻雀』という本に『負けている夜はゆっくり打て』という話が書いてあるんですが、これは、負けている時はツキがないからゆっくり打って勝負の回数を減らして被害を減らせという話でして、負けている時でもやれることはあるというとても印象に残っている一節です。そんな中で、冷静に、でもここぞという時にリスクをとって勝負にいって勝ちきれるひとはかっこいいなと思います。実験も当たるか外れるかというところに身を置いているという意味では麻雀と同じギャンブル。実験にいちいち失敗しても凹まず、精神的にも強くあるようこの言葉を肝に銘じて取り組んでいます」

清水さんの大きな夢は、PUREシステムでPUREシステムを複製させること。これができれば、もう一つの夢、大きなガッツポーズが実現できるはずです。 「生命の起源を研究している人はいっぱいいるのですが、生命の起源は理解が難しいし、今の段階では実証もできません。だから、どうしても理論的な研究になってしまう。理論的なことへの憧れはあるので、いつか足を踏み入れたいなと思っています。

「研究者で大きいガッツポーズができる瞬間に出会える人ってそうそういないはず。皆さん大体『積み重ね系』じゃないでしょうか。私もプロセスを積んでいく方式ですから、まずはじんわり系で着実に取り組んでいって、ここぞというところで勝負をかけていきたいなと考えています。」