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研究者自ら営業や予算立てを行い、現場を知る

その後、生化学を学び直し、PUREシステムを使って、より効率よくタンパク質を作ることに2年間取り組み続けた清水さん。今度はPUREシステムを販売する現場を間近で見たいと思い、株式会社ポストゲノム研究所に入社します。主任研究員として学会のブースに立って売り込みをしたり、実際に使われている顧客先に出向いて使い心地や不安点などを聞いたり。営業範囲は関西だけでなく富山など広範囲に及びました。

「自分が作ったものが売られていくのを間近で見られてうれしかったです。想像していなかった使い方をする研究者に出会うこともでき、新たな研究のきっかけにもなりました」

他にも、原価計算や生産管理、予算管理まで行ったというから驚きです。

「会計担当者は、ものを生産する時にどこにどれぐらいのコストがかかっているのかを細かく把握しづらいため、当時設定されていた原価はかなりざっくりしたものでした。しっかりコスト計算するためには生産の手法をすべてわかっている私がやればいいと考え、税理士さんに原価計算の基本を聞き、自分で計算していました。その頃はどうすれば会社がうまく運営できるかをずっと考えていたので、お金の流れに直結する会計業務に対しては真剣に取り組んでいました」

会社に勤めていた1年半の間に、研究にまつわる金銭面を把握できたり、どういう仕組みに沿って自分が作ったものが社会に出ていくのか体感できたりしただけでなく、一社会人として一般常識が不足していることを気づかせてくれる様々な経験を積むことができました。

しかし、いくら楽しいとはいってもやはり研究者、「そろそろ研究をしたい」と思い始めた清水さん。ちょうど東京大学の新領域創成科学研究科の上田卓也教授からのお声がけもあり、メディカルゲノム専攻の助教に就任しました。この時期、現在のQBiCグループディレクターである上田泰己さんとも出会います。

「その時、彼から生命や細胞を創るということをやってみないかという話があって。私はPUREシステムをどのような方向性に生かすのが面白いのか考えていたのと、上田泰己さんは私と年齢も近く、同じ若い人がやろうとしているなら乗っかるのもおもしろいかなと思い、生命を創るという方向に研究をシフトしていきました」

無細胞でタンパク質を作るのと生命や細胞を創るのとでは一見大きく違うように思えますが、根底では一緒と思えた清水さん。何よりPUREシステムをより価値のあるものにしたいという一念から、生命を作ることができるシステムへと発展研究を始めました。