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大好きなものづくりを極め、道を開く

無細胞タンパク質合成システムの一つであるPUREシステム。細胞を用いず試験管の中でタンパク質を作る技術は、幼いころからものづくりが大好きで、それを追求し続けた青年が見つけた、究極の「ものの作り方」でした。

「昔から手順を教えられて作るのではなく、自分で考えた作り方を試してみたいと思う子どもでした。こうやって作ったらうまくいくなと考えたことがはまる感覚がたまらなくて。小学校の2、3年生の時ぐらいから『学研の科学』の付録のキットを作るのが好きでよく作っていました。そういえば当時は、エジソンの伝記を夢中で読んでいました。彼が次々と発明していくところが好きでした」

ものづくり熱は東京大学に進んでも変わらぬまま。工学部へ進み、学び始めた渡辺公綱教授の研究室で、今も取り組む「無細胞の系を作る」というテーマと出会います。

「教授から提示された無細胞システムにまつわる様々なテーマを見ていて、『こんなことができるんだ』と新鮮に思って選んだのがはじまりで、その思いは変わらぬまま今も取り組んでいます」

PUREシステムを完成させたのは、大学院マスター2年の時。きっかけは、実験の取り組み方法の見直しからでした。

「無細胞の系を作るために、タンパク質合成に関わる因子を精製し、目的とするタンパク質の設計図が書かれているDNAの断片と混ぜ合わせて、思った通りのタンパク質が合成されるかどうかを調べていきます。始めはかなり雑に実験を行っていたので、全くうまくいかなかったのですが、丁寧に実験を進めるようになって狙った結果に近いものが出だしました。結局、ひとつひとつのタンパク質を丁寧に精製するのが肝でした。この時、なんでも丁寧にやらないとだめなのだなと身を持って感じましたね。私は普段は雑に生きているのですが、もともと幼少期はかなり几帳面な性格をしていたので(笑)、それ以来、無駄に雑に実験をしないようには心がけています。」

研究を重ねた3年間、「いつか大きな発見をして『よっしゃ!』とガッツポーズしてやろう!」と思い続けていた清水さん。しかし、この時はいろいろと実験を行っているうちになんとなく完成品ができてしまい、その夢は実現できなかったことが心残りと振り返ります。

「その後も、軽く『よっしゃ』と思える成果を出すことはあるのですが、大きな『よっしゃ』ではない。PUREシステムの時も、『これはいけるんじゃないかな』というのが連続的にあるだけで、大きな飛躍がなかった。一山一山着実に山を超えていく感じなので感動が薄くて(苦笑)。もっと大きく喜びたかったなというのが正直なところです」