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ゼブラフィッシュ変異体を解析し、分子機能を解明

帰国後、京都大学へ。日本で初めて国が主導で行った若手研究者をサポートする事業に京都大学が応募することを知り、川原さんは留学先で行った研究をさらに発展させるため、新しいゼブラフィッシュ変異体を作って解析することを提案したところ見事採択され、4年間のプロジェクトに取り組まれました。 「今も変異体の解析を続けていますが、その土台を築けたのが京都大学時代でした」

そして、2007年、国立循環器病研究センターにて変異体の原因遺伝子の解析を4年間行った後、2011年にQBiCへ入られました。現在進められている最先端次世代研究開発プログラムを強力に推進できる場所を探していた時にちょうどQBiCが立ち上がり、最先端のイメージング技術を含めいろいろな生命システム研究ができる環境として最適だったため参加されました。現在、川原さんのグループでは、循環器系がどうやってできてくるかゼブラフィッシュを使って調べています。

「ゼブラフィッシュの卵は、胚体外で短時間で発生し、数日間は透明なのでどういう風に器官形成ができているかを顕微鏡で見ることができます。GFP(緑色蛍光タンパク質)を心臓や血管細胞に発現させ可視化すれば、発生の過程でどうやって心臓や血管ができてどういうネットワークを形成していくかを見ることができるのです」

前述の三大疾病の中でも、癌細胞は増殖する時に周りの正常な血管から新しい血管を引っ張ってきます。その部分を断つことは今の癌治療の一つのターゲットとなっており、川原さんも病気の解明や治療薬の開発へ繋がればという思いで取り組まれています。

今は基礎研究に力を入れており、循環器系がどうやってできるか、特に分子レベルでどういうことになっているかを、順遺伝学と逆遺伝学という二つの手法を使って解析されています。QBiCに入ってからは、ゲノム編集の技術を開発し、比較的簡単に遺伝子を破壊したゼブラフィッシュを作るところまでできるようになったそうです。また、今年の始めには、隣のラボである岡田グループと共同でゲノム編集技術の開発を行い、その成果を『内在性ゲノム標的配列に対するTALENによる切断活性の評価法』という論文にして発表もされました。

「これまで難しかったゼブラフィッシュの逆遺伝学的解析手法を岡田さんと人工ヌクレアーゼを用いて開発しました。約一年という早さで論文という形で発表することができたことは、岡田グループとミーティングなどを一緒に行うことが大きかったと思います」