home
2/5

留学を期に、個体レベルの研究へシフト

日本人の三大死因である癌、心臓病(心臓疾患)、脳卒中(脳血管疾患)。これらの病気は、心臓や血管といった循環器系が病態の発症に大きく関係しています。川原さんは、その病態を理解するため、脊椎動物における循環器システムにおいて正常な発生過程ではどういうことが起きているか、腫瘍血管の形成をどうやって抑えることができるかという点に注目した研究を行っています。

筑波大学卒業後、大阪大学大学院に進学した川原さん。ここで、免疫系の重要な制御因子であるインターフェロン-ベータ、インターロイキン2の遺伝子の分離と構造の解明で有名な谷口維紹教授の研究室に6年間在籍します。その後、1995年に大阪大学医学部遺伝学の学術振興会研究員として、細胞死の分子メカニズムの研究をされていた長田重一先生の研究室にも席を置きます。1998年、二人の恩師の「国外留学は研究以外にも幅広い人生経験ができるよ」というアドバイスを受け、アメリカのNIH(アメリカ国立衛生研究所)へ留学。この期を研究テーマを変える大きなチャンスと捉えた彼は、免疫細胞の研究から個体レベルでの研究へとシフトを図りました。

「だんだん体全体のシステムを知りたいという思いが強くなっていたというのもありました。細胞は、我々の体の器官や組織などを形成する最小単位になっていますが、細胞が集まって機能する時にどのように挙動し、器官ができあがる過程はどういうものか以前から興味があったので思い切って変えてみました」

留学先として川原さんが選んだのはイゴール・ダービッド博士の研究室。ダービッド博士らはゼブラフィッシュという小型魚類が遺伝学的な解析ができて初期発生研究に向いているということに注目して研究していました。

「留学は5年間していたのですが、様々なアメリカの文化や生活に触れる機会も多く、非常に楽しかったですね。サッカーのワールドカップの時は、各国の研究者が母国の応援をし合うので迫力がありました。また、アメリカは父親も育児に参加するのが当たり前の国なので、私もハロウィンの時にかぼちゃを畑へ取りに行ったりサンクスギビングデーでターキーを焼いたりしました。研究者と父親という二つを体感できたのも貴重な経験でした」