細胞集団における同期現象の分子メカニズムを解明
2014年4月8日 ツイート
QBiCの上田昌宏グループと長年の共同研究者である米国Johns Hopkins 大学のPeter Devreotes 研究室が、今回、新たな共同研究の成果をサイエンス誌に発表した [1]。細胞性粘菌を用いて、転写因子の核内への周期的局在と転写産物の発現周期性の関係を詳細に調べた論文として注目される。もともと、QBiC上田昌宏グループの村本哲哉研究員が生きた細胞の核内の転写産物をリアルタイムで定量することが出来るMS2システムを使ってcsaA 遺伝子の転写の振動現象を見つけていた。今回の論文では、生きた細胞で、GtaC転写因子の細胞質から核への移行とcsaA 遺伝子の転写を同時にモニターすることに成功した。csaAの転写量は約5.6分の周期で振動し、GtaC転写因子の核への移行の振動周期とほぼ一致した。両者の位相には約3分の時間差があり、転写因子の会合から転写が検出されるまでに要する時間に相当すると思われる。GtaC転写因子の移行とcsaA転写の周期性は環境シグナルであるcAMPの波に呼応しており、粘菌の発生過程を同期する分子機構の一端が解明された。村本研究員がこれまでに解析した17種類の遺伝子のうち周期性を明瞭に示したのはcsaA遺伝子だけだったが、GtaC転写因子は複数の遺伝子に影響しているはずで、今後も発現の周期性を示す遺伝子がみつかるだろうと考えられている。