TOP > ニュース・特集 > 細胞個性をハイスループット解析
近年、同じ種類の細胞であるにも関わらず、遺伝子発現など細胞の振る舞いが各細胞で異なり、「細胞の個性」ともいうべき性質があることが分かってきました。
細胞個性を調べるには、細胞を1個ずつ分離し解析する技術が必要です。これまで、シリコーンゴム製のマイクロ流体デバイスを利用するなどの手法がありましたが、デバイス作製に高い技術が必要でした。
今回、QBiC一細胞遺伝子発現動態研究ユニットと集積バイオデバイス研究ユニットの共同チームはシリコーンゴムに代わる素材として、寒天から精製されたアガロースに着目しました。そして、アガロース表面に大腸菌1個が入る長さ4×幅0.6×深さ0.5マイクロメートル(μm、1,000分の1mm)のカプセル状のくぼみ「大腸菌カプセルホテル」を作製しました。遺伝子発現解析の際、大腸菌カプセルホテルに大腸菌を含む液体を流すと自然と大腸菌がカプセル内に取り込まれました。そして、温調装置付き顕微鏡を使ってカプセルに入った状態の大腸菌を生きたまま観察することができました(図)。
さらに、カプセルと個々の大腸菌との位置情報を対応させたことで、ハイスループットな自動画像解析を実現しました。
また、細胞分裂速度の解析では、長さ300×幅0.85×深さ0.5μmのライン状のくぼみ「ラインホテル」を作ることで、分裂した大腸菌がそれらの中で増殖できるようにしました。
大腸菌カプセルホテルもラインホテルも、シリコーンゴムの鋳型を入手すれば、研究室で多用されているアロガースにくぼみを転写することで、簡単に、何度でも作製することができます。
本成果は大腸菌だけでなく、微生物生理学、バイオテクノロジー、多剤耐性菌解析など幅広い分野を対象としたハイスループット解析の実現が期待できます。