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プレスリリース

精子が卵子を活性化する新しい仕組みを解明

2016年4月8日
Calcium Wave

卵子は物質の合成をほとんど行わない不活発な細胞だが、精子と受精すると、活発に物質を合成し、細胞分裂を始める。これを「卵子の活性化」と呼ぶ。この転換のきっかけとなるのが、卵子内のカルシウム濃度変化が伝播していく現象「受精カルシウム波」だ(図)。

QBiC発生動態研究チームの高山順研究員と大浪修一チームリーダーは、精子が受精カルシウム波をどのように引き起こしているかを明らかにするため、体が透明かつ遺伝学的実験が容易な線虫C. elegansを用いて、その受精カルシウム波を高速イメージングと画像処理によって解析した。さらに遺伝学的実験とシミュレーションを組み合わせて解析し、精子に存在する「TRP-3」というカルシウム透過性チャネルが、受精直後に精子侵入点付近で急激なカルシウム濃度の上昇を引き起こし、これがきっかけとなって卵子全体に伝播するカルシウム波が発生することを発見した。

さらに、受精の際にTRP-3を含む精子の細胞膜と卵子の細胞膜が融合することが確かめられた。したがって、TRP—3が卵子に細胞外からカルシウムイオンを流入させる「導管」として働いていると考えられる[1]。


  1. Takayama, J. and Onami, S. “The Sperm TRP-3 Channel Mediates the Onset of a Ca2+ Wave in the Fertilized C. elegans Oocyte” Cell Reports