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「生命の不思議」が研究者としての原点

研究者を目指した時期は不明、というぐらい小さな頃から研究者への道を考えていたという谷口さん。「昔から生命そのものが自分にとって大きな疑問でした。僕はなぜ存在しているのか、僕らは物質の集合体なのになぜ意思があり自分というものがあるのか、ものすごく不思議でした」。そこで、生物という疑問を新しい技術を使って明らかにしていきたいと大阪大学基礎工学部生物工学科を受験されます。選ばれた学科はいろいろな学びを幅広く行うことを推奨する学科で、分野選択に悩んだ谷口さんの意向にぴったり。卒業要件に全く必要のない授業も積極的に受講しながら、物理や生物、化学、コンピュータプログラミング、システム工学、エンジニアリングと幅広く学び、今の研究スタイル「必要なら作る」の礎を築くこととなります。

大学4年生の時、当時基礎工学部の兼任教授をされていた現QBiCセンター長柳田敏雄教授の研究室で学び始め、大学院も合わせ6年間在籍。生命現象をミクロの立場、特に一分子のレベルから見る研究を行いました。

「通常の生物学者はたくさんの分子や細胞に着目し、たくさんのものから平均情報を得る形で解析しますが柳田先生の研究室はそれとは違って、ミクロのレベル、特に一分子のレベルから生命を理解しようとします。そのための技術も方法論も、もしなければ自分たちで作るという研究室でした。理論を積み上げて総合的に現象を理解するという物理学的なアプローチが僕の波長に合いました」

2006年3月に博士号を取り、4月頭に海外特別研究員というフェローシップ(研究奨学金)への応募を決めた谷口さん。締め切りは4月10日と迫っていたのに行く先は未定だったというから肝が据わっています。そんな時、科学誌『Nature』『Science』にハーバード大学のサニー・シー教授が立て続けに発表した、「一細胞の中で一分子の感度でタンパク質の発現を捉える」という革新的な論文を目にします。次は研究を一細胞単位に広げていきたいと思っていた彼は、「この人の下なら生命の基本に迫れる!」とすぐに柳田教授に推薦状を書いてもらいサニー教授へ送付。2日後に返事→即渡米して面接→2日後にOKの返事と進み、締切ぎりぎりにフェローシップの志願書を提出と、決意から実を結ぶまでわずか1週間という短期間でその後数年間の人生が決定!さらに、9月の出発までに電撃結婚もし、二人での渡米となりました。