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教授との出会いで物理に目覚めた学生時代

小中学生の頃までは、社会科が好きな「文系少年」だったという田中さん。ところが高校の頃から、物理への関心が高まり、いつしか理系進学を志すまでになりました。

「ボールをこのくらいの力で投げると、どこまで飛んで落ちるかというのが計算すればちゃんとわかるでしょう? 自然が法則で出来ているということが、面白いなと思ったんですよ」。

そうはいっても、まだ10代の少年が考えること。すぐに将来の具体的な職業に結びつくには至りませんでした。より具体的な研究テーマが出来たのは、東京大学に進学してからです。教養課程で、後に師事することとなる北森武彦教授の量子力学系の講義を受けた田中さんは、自然界に存在するあらゆる物の色を決めている分光の理論に引き込まれていきました。どうやら学問のみならず、北森先生のお人柄に魅せられたところもあったようで、「いわゆる学者タイプというよりビジネスマンっぽいというか、パワフルで一所懸命なところがある方でした」と、当時の印象を語られます。

大学を卒業した田中さんは修士課程から博士課程へと進み、心血管細胞バイオマイクロアクチュエーターの構築、マイクロチップを用いた血管内皮細胞の分析、マイクロチップを用いた血管組織の再構築など、現在も主要テーマとして取り組んでいるオンチップの細胞創成につながるデバイス開発についての研究を深めていきました。06年には「心筋細胞を駆動素子としたバイオマイクロポンプの創製」が第20回独創性を拓く先端技術大賞(フジサンケイビジネスアイ主催)でニッポン放送賞(優秀賞)に輝くなど、その研究成果は学外でも注目を集めるようになりました。