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本研究室では、発生・再生現象、特に器官の形がどう決定されるのかに興味を持って、理論研究者と実験研究者の混合チームで研究を進めています。
(メンバー構成) 理論:実験=3:4(2015年度)、 4:4(2014年度)

「形がどう決定されるのか」を理解するための出発点としては複数考えられます。

より小さなスケールから出発するのであれば、分子生物学を起点として、表現型に影響する(器官の形に異常が見られたり、そもそも対象とする器官ができなくなったりする)遺伝子を探索したり、その遺伝子の上流や下流のシグナル経路を同定していくというアプローチです。分子が明らかになることは非常に重要なことで、ある器官の発生に重要な分子が分かれば、例えばES細胞やiPS細胞から対象器官の再構築を行おうとする際の有力な手がかりとなります。

また、器官を構成する単位は細胞であると考えると、細胞を主役としてその動態を解析することから出発することも考えられます。例えば器官の発生・再生過程でそのサイズが大きくなるための主要なメカニズムの一つとして細胞増殖が挙げられます。細胞の増殖率が組織の場所や発生のステージごとにどう違うのか、それは増殖系のシグナルのどういう制御によって実現されているのか、を明らかにすることで形態形成のメカニズムを理解する方法です。もちろん器官のサイズを決めているのは細胞の増殖だけではありません。肝臓の再生過程では、個々の細胞サイズが大きくなることで肝臓全体のサイズを回復する(場面がある)ことが明らかになっています。また、細胞死の速度と細胞増殖の速度のバランスが全体の大きさを決めるのに重要な場面もあるでしょう。

もっと大きなスケールとして組織のレベルで何が起きているのかを調べるところから出発することも考えられます。器官の形態形成過程において時間とともに形が変わるのは、組織の変形によって実現されます。多くの器官では、その初期発生においても数万~数百万の細胞から構成されます。こうした状況では、1細胞レベルでその形や大きさがどう変わったかを詳細に調べるよりは、個々の細胞レベルの変化を局所的に平均化して、(1細胞の形態に比べてずっと大きな)細胞集団を単位としてその変形を考える方が組織全体の形の変化を良くとらえることができます。例えば増殖が頻繁に起きている領域があれば、組織レベルで見たときには、単位体積当たりの体積増加率が高いという情報として現れるし、細胞集団が特定の方向にお互いの配置を変化させれば、組織レベルでは変形の異方性という形で現れてきます。各発生ステージに対して、組織の各場所でどのような変形が起きているかを組織全体にわたって調べることで、器官形態の変化に関する大局的な情報を得ることができます。

以上に述べた、分子、細胞、組織の各空間スケール(各階層)で起こることはお互いに独立ではなく、密接に関連し合っています。そのため、発生・再生過程において器官の形がどう決まるのかを理解するためには、最終的には異なる階層間の動態(ダイナミクス)がどのように統合されているのかを明らかにしなければなりません。研究のアプローチごとに違うことは、どの階層から出発するかという出発点だけで、最終的には全階層間の関係性を解明することを目指しています(と自分は思います)。

本研究室(の主に実験班)は、器官の形(とその変化)の一番直接的な記述である組織レベルの変形ダイナミクスを解析することを出発点とし、その変形動態と局所的な細胞動態の関連性の解明を目指して研究を進めています。具体的には、ニワトリ胚の四肢発生、脳初期発生、カエル幼生における四肢発生と再生を中心に解析を進めています。また、新規メンバーのバックグラウンドを生かして、ゼブラフィッシュ胚における頭部形成、ニワトリ胚における心臓形成の解析も始めています。

他方で理論班(応用数学、工学、数理生物などをバックグラウンドにもつメンバー)は、(1)実験サイドから得られたデータの解析や、データを解析するための解析方法自身の考案(実験と理論の一番最初にくる接点的研究)、(2) 現在の技術では実験からアプローチするのは難しい現象に対して、数理モデル(組織の力学モデルやシグナル動態のモデル)を作ってシミュレーションすることで現象の理解に見通しを与える研究(理想的には「予測」を与える研究)、あるいは、(3) より抽象的な研究として発生や再生現象に普遍的なルールの解明を目指した理論構築等を行っています。

最初に書いたように、本研究室の特色は理論研究者と実験研究者の混合チームであることです。異分野の研究者が同じスペースで日々研究することによって、お互いに得意なところを教え合って、理論と実験を融合した研究を目指しています。

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発生幾何研究チーム

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