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概日時計の複雑さ

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概日時計の進化
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我々は哺乳類概日振動が複雑にもつれたネットワークより生み出されることを明らかにしてきた。理論的な観点からはそのような複雑なネットワークは単純な振動を生み出すことには必要とされないように思われるが、この複雑性は概日時計の3つの特徴である柔軟性、頑健性、感受性を生み出すことに重要なのだろう。
概日時計にとって重要なそれらの特徴を理解するためには、その複雑性を包括的に理解することが必要である。しかしながら哺乳類概日時計のような複雑なシステムは、その部分を取り出して研究することでは理解できない。複雑なシステムのまさに本質は、その構成要素の相互作用すなわちネットワークに宿る。それ故に複雑なシステムのより正確な理解のためには、そのシステムのネットワークの基本的な設計原理を抽出することが必要である。その基本的な設計原理を抽出するより良い方法は、本質的には似ているが進化的に離れている2つのシステムを比較することである。幸いにも本質的に似た概日時計システムを持ちながらも進化的に離れた2つの多細胞生物が知られている。ここではマウスとハエの概日時計に対する比較ゲノミクスにより、柔軟性すなわち本質的な設計原理の理解を試みている。
概日時計の構成因子の多くはマウスとヒトのような近縁種間で保存されているのみならず、ハエとマウス(昆虫と哺乳類)のよう進化的に離れた種間でも保存されている。進化的に離れた種間では複雑なシステムの構成要素とそれらの相互作用がそのトポロジーと同様に、そのシステムのネットワークにとって重要な設計原理となると期待されている。この観点からそれら2つのモデル生物においてどこが似ていて、どこが異なるのかを知ることは重要である。我々はショウジョウバエと哺乳類の概日時計システムの類似点に関するコンセンサスを広げうる状況証拠を得た。哺乳類の時計遺伝子Dec1のショウジョウバエホモログであるbHLH-orange(clockwork orange; CWO)に関して、その重要性がGenes & Development誌上で報告されて以来、我々は見るからに異なる2つの種間で予期できぬほどの類似性を今にも明らかにしようとしている。他方では、それらの概日時計システムの違いがそのネットワークの柔軟性に関する手がかりを提供する新分野と成り、概日時計システムはどの程度柔軟なのか、本質的な設計原理とは何か、といった問題に光を投じる可能性がある。
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